岩手日報社 × 川徳
特別対談
変わるまち、変わるひと
“かお” と向き合いながら 後編

1866(慶応2)年創業の川徳と、1876(明治9)年創刊の岩手日報社。節目の年を迎えた両社による対談の後編です。まちや人の「変化」を見つめながら、未来に向けて地域とともに歩むこれからについて語り合いました。

視座の転換
世界が認めた「盛岡」の日常
―ニューヨーク・タイムズ紙への記事掲載を機に、盛岡が世界から注目されています。まちや人の「変化」をどう感じますか。
川村
記事が出て一番驚いたのは盛岡市民自身だったと思います。評価されたのは、私たちが当たり前だと思っていた街並みや喫茶店文化、歩いて回れるサイズ感です。まさに「日常」が「価値」に変わった瞬間でした。最大の変化は市民の皆さんの表情です。他の都市の真似をするのではなく、「盛岡のままでいいんだ」という自信が生まれました。この内側の意識変化こそが最大の財産です。当社の若い記者たちも足元の魅力を再発見する記事を発信しており、意識変化の現れの一つだと感じています。
斎藤
盛岡の人たちはこのまちが大好きで、地元への愛が深いと感じています。そして、伝統を守りつつも、新しいモノ、良いモノを柔軟に受け入れる土壌があります。盛岡でチャレンジする若い世代も育っています。川徳も老舗の伝統を守りつつ、物語性や価値を感じられる「文化の発信拠点」でありたいと考えています。
昨今、キャラクター展やアニメ展といったポップカルチャーの発信に積極的に取り組んでいますし、2025年にオープンしたヘラルボニーの「ISAI PARK」もその一つだと思っています。
昨今、キャラクター展やアニメ展といったポップカルチャーの発信に積極的に取り組んでいますし、2025年にオープンしたヘラルボニーの「ISAI PARK」もその一つだと思っています。
新コンセプト
人がリアルに集う「FACE」の力
―まちが変わりゆく中で、川徳は新コンセプト「FACE 場所からかおへ」を掲げました。込められた想いを教えてください。
斎藤
2023年から2年にわたり、全館の大規模改装を行いハード面を整備しました。そこで今年は改めて、リアルショップの財産である「人」にスポットを当てることにしたのです。販売員一人一人が川徳の「かお」となり、お客さまに「あなたに会いに来た」と言っていただけることがデジタルにはない差別化につながります。「人と人がリアルに集う」「かおを合わせる」ことは街のにぎわいにつながりますし、盛岡の中心で商売をする私たちの大切な役割・使命です。川徳が盛岡の「かお」であり続けたいという想いも込めました。
川村
最終的に一番大切なのは「人」であるという結論に至ったと伺い深く共感しました。川徳のコンセプトは岩手日報社が創刊150周年に向けて策定したミッション「今日も、岩手を元気にする。」に重なるところがあります。新聞における「FACE(かお)」とは、紙面に登場する県民一人一人の人生そのもの。成功も苦悩も、地域で頑張る「かお」をありのまま伝え、岩手を元気にするメディアであり続けたいという思いを強くしました。
次なる挑戦
「百貨店」と「紙面」の枠を超えて
―未来に向けて、どのような取り組みを進めますか。
斎藤
百貨店の枠を超え「地域コミュニティーの中核(ハブ)」になることで、地域に恩返しをしていきたいと考えています。160周年企画としては、県内の食品メーカーと「川徳限定オリジナル商品」を開発・販売するなど、協業を広げます。4月17日からは「川徳創業160周年 誕生祭」と銘打ち盛り上げていきます。岩手日報社とも連携し、地域の祭りや文化、スポーツを応援します。すでに3月から「誕生85周年記念 トムとジェリー展 君が笑うと、僕も笑っちゃう」を協力して開催しましたし、5月には「村田林藏展」を開催します。これらを通じて、盛岡に笑顔を増やしていきたいです。
川村
私たちも紙面の枠を超え、地域活性化につながる事業に取り組みます。どんなにAIが進歩しても、人間同士が対話を積み重ねることでしか成し得ない仕事があります。これからの地域社会で重要なのは、心と心が通い合う「響感(きょうかん)」です。被災者の涙に触れ、共に汗を流して紡ぐ言葉にAIは勝てません。喜びも悲しみも分かち合う「体温のある報道」を追求し、住民と共に解決策を考える「伴走型メディア」へと進化していきます。歴史ある両社がタッグを組むことで、岩手の魅力を発信し、課題解決に臨む大きなムーブメントを起こせると確信しています。
【創刊150周年岩手日報社×創業160周年川徳「特別対談」の全編は、4月17日付けの岩手日報本紙に掲載しております。】

◾川徳 代表取締役社長
斎藤 英樹 氏
白鴎大卒。94年入社。執行役員営業戦略担当長、取締役計画本部長などを経て、25年から現職。56歳。盛岡市出身。

◾岩手日報社 代表取締役社長
川村 公司 氏
慶応大卒。90年入社。編集局長、広告事業局長、常務取締役などを経て、23年から現職。60歳。花巻市出身。












